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肝臓がん
概要
肝臓がんは肝臓にできるがんであり、肝臓自体から発生する原発性肝がんと、他の臓器のがんが転移して発生する転移性肝がんに大きく分けられます。原発性肝がんの中には、肝臓の実質部分(実の部分)のがんである肝細胞がん、肝臓内の胆管のがんである胆管細胞がん、その他の肝臓がん(血管や液体の溜まりである嚢胞内のがんなど)が挙げられます。
日本における2012年の統計データでは、原発性肝がんの罹患率は男性が第5位で女性が第8位です。この多くは肝細胞がんで、その割合は原発性肝がんの約95%を占めています。肝細胞がんはC型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝炎もしくはこれらの肝炎から肝硬変に至る状態など、慢性肝障害を有する肝臓から発生することが多い病気です。
症状
肝細胞がんは、がんが大きくならない限り症状が出にくい病気です。がんが大きくなると上腹部に「しこり」として触れたり、痛みを感じることがあります。また、胆菅細胞がんは肝臓内の胆汁の流れが悪くなることによって、皮膚や眼球(白目)が黄色くなり、尿が褐色調になる「黄疸」が見られることがあります。
検査方法
血液検査による腫瘍マーカー測定、超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影検査などを行い、診断を行います。CT検査は血管造影剤を用いたダイナミックCT検査が診断に優れていますが、ヨードアレルギーのある方や腎機能障害がある方、気管支喘息の既往歴がある方は血管造影剤を使用できない場合があります。近年、MRIはEOB・プリモビスト造影剤を用いて、腫瘍の血流と肝細胞機能を評価することで診断する検査方法が用いられます。
治療方法
肝障害度、腫瘍数、腫瘍の大きさによって治療方針を決定します。肝障害度は肝障害の強さを血液データや腹水の有無から分類したものです。また、肝硬変の重症度を判定する基準として、Child-Pugh分類も多く用いられます。
1.肝切除
肝臓がんは外科的手術により取り除く(切除)治療が最も確実な方法と考えられています。しかし、肝臓は切除した後に機能不全をきたす可能性があります。そのため、個々の肝臓の機能に合わせて切除できる肝臓の大きさが異なります。治療方針を考える段階で、切除が可能かどうかを十分に検討して切除術式を決定します。切除不可能と判断することもあり、他の方法を選択する場合があります。
2.アブレーション
マイクロ波凝固療法(MCT)、ラジオ波焼灼(RFA)、経皮的エタノール注入療法(PEIT)などが挙げられます。体の表面から皮膚を通して、もしくは手術により直接肝臓に針を刺し、腫瘍を含めた肝臓の一部を壊死させる治療方法です。切除と比べて肝臓に与える影響が少ない治療方法です。
3.肝動脈塞栓療法(TAE)
正常の肝臓は門脈と肝動脈という血管から栄養を受けていますが、肝腫瘍は肝動脈だけです。このことを利用し、カテーテルを用いて腫瘍を栄養する肝動脈を塞栓物質により閉塞させることで、腫瘍細胞を壊死させる治療です。塞栓物質に加え、抗がん剤を使用するTACEと呼ばれる治療も多く行われています。
4.全身化学療法
肝細胞がんの治療薬としてソラフェニブという分子標的薬が用いられるようになりました。抗がん剤治療に位置付けられるこの治療法は、手術による切除やアブレーション、TAEなどの治療が不可能な場合に選択されます。また、他の臓器への転移が診断された場合にも用いられる治療です。胆管細胞がんに対する化学療法には、TS-1の単独もしくはシスプラチンと組み合わせて使用されます。
5.肝移植
肝細胞がんが「3cm・3個以内」または「5cm、単発」である場合、肝移植が選択されることがあります。2004年から保険適応となったこの治療は、限られた病院での治療です。当院では肝移植は施行しておらず、肝移植が最適と判断した場合は治療可能な病院へ紹介いたします。
参考
出典:日本癌治療学会「肝がん診療ガイドライン」より