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ドクターが教える!病気あれこれ

脳梗塞

概要

脳の血管

 脳梗塞とは、脳の血管が突然詰まって、血流が途絶え、脳の神経細胞が死んでしまう病気です。脳の細胞は、突然血流が止まると数時間以内に完全に死んでしまい、再生は困難なため、一旦脳梗塞を起こすと重大な後遺症が残ったり、生命に関わることもあります。そこで少しでも後遺症を軽くするためには、できる限り早く治療を開始して、脳の血流を改善させることが重要です。

 脳梗塞の種類には、心房細動などの不整脈が原因となり血栓が心臓から脳に流れて詰まる“心原性脳塞栓症”、脳血管の動脈硬化が原因となる“アテローム血栓性脳梗塞”、脳内の細い血管が閉塞するラクナ梗塞などがあります。

症状

 意識障害、手足の麻痺(脱力)やしびれ、言語障害、めまい、視野障害、歩行障害などの重篤な症状が生じます。

検査方法

  • CT検査
  • MRI検査

治療方法

 これまでの脳梗塞の治療は、抗血栓薬・脳保護薬・抗脳浮腫薬を用いて脳梗塞の悪化や再発を防ぐことが目的でした。一方最近では、発症数時間以内の脳梗塞では、詰まった血管を早期に再開通させれば、脳梗塞に陥る領域を少しでも小さくすることができ、症状が回復する可能性があることがわかってきています。

 治療前には、CTやMRI検査で、脳梗塞が進行して回復不可能になっていないか、未だ脳組織が救済可能かどうかを確認してから、再開通治療が可能かどうかを判断し、適応がある場合には、t-PA静注療法や血栓回収術(カテーテル治療)による再開通治療を試みています。

 一方、すでに脳梗塞が進行して回復不可能になっている場合は、t-PA静注や血栓回収術(カテーテル治療)などの再開通治療ができないため、従来までの点滴の治療薬(抗血栓薬・脳保護薬・抗脳浮腫薬など)を用いて治療を行います。これらの治療薬は再開通治療に比べて副作用は少ないですが、症状の改善に関しては不十分な場合が多いです。

急性期脳梗塞に対する t-PA静注療法

 発症から4.5時間以内で、かつCTやMRI検査で未だ脳梗塞が進行して回復不可能になっていないと判断でき、かつ治療への禁忌項目に抵触せず、治療の危険性がそれほど高くないと考えられる場合には、t-PA静注療法(血栓溶解療法)を行っています。

 血栓溶解薬であるt-PAを静脈より約1時間かけて点滴します。t-PAは脳血管に詰まった新しい血栓に特異的に働いて、血栓を溶かし、閉塞血管を再開通させる働きがあります。t-PAを使うためには、時間だけでなく、CT・MRI所見や血液検査等に様々な条件があり、専門医の診断の下で使う必要があります。

 t-PAは当初は発症から3時間以内の患者さんが適応でしたが、本邦において2012年9月より4.5時間までに適応が拡大されました。米国で行われた発症より3時間以内の脳梗塞に対する臨床試験では、ほとんど障害のない状態にまで回復したのは、t-PAを使った人では39%であったのに対し、使わなかった人では26%でした。日本で行った試験でもほぼ同様な結果でした。日本では2005年10月より使えるようになりました。t-PA静注療法によって良くなる人は約1/3と言われています。残りの人は良くならないか、より悪化することもあります。

 重大な副作用として、脳出血(出血性脳梗塞とも言います)が挙げられます。再開通が遅れてすでに脳梗塞になったところに血液が流れ出すと、血管も細胞ももろくなっているため血管壁が破綻して脳出血(出血性脳梗塞)を起こします。脳出血の程度は様々で、症状に変化がない場合もありますが、時には大出血となって命に関わることもあります。米国の試験では、症状が悪化するような脳出血は6.4%で、うち死亡は2.9%でした。日本の試験では5.8%で、うち死亡は0.9%でした。t-PA療法後の脳出血は、血圧の高い人、高齢者、意識状態の悪い人、神経症状の重篤な人、太い脳血管が詰まった人、高血糖の人などに生じやすいことが報告されています。

脳主幹動脈急性閉塞に対する血栓回収術(カテーテル治療)

 発症4.5時間以内の脳梗塞でt-PA静注療法によって良くなる人は約1/3程度と言われていますが、内頸動脈や中大脳動脈主幹部、椎骨動脈や脳底動脈など、脳を栄養する太い血管の閉塞による重い脳梗塞の場合には、t-PA静注療法のみでは再開通しないことが多く、症状が良くなる人は全体の約3割程度に限られるといわれています。

 脳血管内治療とは、カテーテルを言う細い管を、太腿の太い動脈から脳内にまで挿入して、詰まった血管を再開通させようとする治療です。t-PA静注療法にて閉塞血管が再開通せず効果がない場合に加えて、すでに発症から4.5時間以上経過、あるいは既往歴や血液検査所見などのt-PA禁忌項目に抵触するためにt-PAが使用できないが、MRI検査などで、脳梗塞が進行して回復不可能になっておらず脳組織を救済できる可能性が残されていると判断できる場合に行っています。

 大腿部の動脈を局所麻酔下に穿刺し、カテーテルという細い管を血管の中を通し、脳へ向かう血管(頸動脈など)の中で造影剤を流して、レンドゲン撮影を行い、脳の太い血管が閉塞していないかどうかを確認します。そして、造影で脳の太い血管に閉塞を認めた場合には、まず、脳血管内に吸引カテーテルや一時展開型のステントなどの血栓回収器材を挿入して血栓を回収し、閉塞した血管の再開通を試みます。

 
吸引カテーテル   一時展開型ステント

 手技にもかかわらず血栓を回収して再開通できない場合は、

  1. 詰まった血栓を、脳血管内に進めた細い管(マイクロカテーテル)やガイドワイヤー等で破砕する
  2. t-PA静注療法が施行できない場合は、ウロキナーゼという血栓溶解剤をマイクロカテーテルから注入して血栓を溶かすバルーンカテーテルを用いて閉塞・狭窄した血管を拡張して再開通させる
  3. ステントと呼ばれる金属の筒を用いて、閉塞血管を拡張して再開通させる(主に内頸動脈や椎骨動脈の閉塞・狭窄の場合)

 などの中から、血管の状態に応じて可能な方法を試みています。

 血栓回収術(カテーテル治療)は、発症から8時間以内が適応とされています。近年海外で行われた他施設研究の結果では、脳の太い動脈の閉塞による急性期脳梗塞に対して、t-PA治療を含めた内科的治療に、血栓回収術(カテーテル治療)を追加することで、日常生活自立レベルまで回復する予後良好群が3割程度から4割程度に増加する可能性があることが判明しています。

 但し、発症からの時間が経過するほど、再開通が得られても、脳梗塞の進行を止められず、すでに脳梗塞に陥った脳組織に再開通をさせることにより脳出血(出血性梗塞とも言います)を生じる危険性が高くなりますので、治療は時間との勝負になります。

 また、CTやMRI検査などの結果、脳梗塞がすでにかなり進行している時には8時間以内であっても使えません。一方検査結果によって、脳血流が比較的保たれている場合、すなわち脳梗塞の進展が遅いと診断された場合には、血栓回収以外の脳血管内治療(バルーンやステントなど)は8時間以降でも行うことができる場合があります。但し、発症からの時間が経過するほど、再開通が得られても、脳梗塞の進行を止められず、脳出血(出血性梗塞)を生じる危険性は高くなります。