狭心症・心筋梗塞
狭心症、心筋梗塞とは?
冠動脈の解剖
図1-1:冠動脈の解剖
狭心症
図1-2
急性心筋梗塞
陳旧性心筋梗塞
狭心症、心筋梗塞に対する一般的な治療法
内服治療
血管内治療(カテーテル治療)
図1-3:狭心症に対する血管内治療
カテーテル治療は、狭くなった部位を特殊な風船で広げ、血流を改善させる治療です。血管を広げた後にステントという金属の筒を入れて、再び血管が狭くならないようにします。従来のステントは、狭心症の再発が多く、治療成績は十分満足できるものではありませんでした。しかし、最近になり、薬剤溶出型ステント(DES)が登場し、従来のステントの問題点を解決できるようになりました。このステントには、特殊な薬が塗られており、ゆっくりとその薬が溶け出し、早期再狭窄を抑えます(図1-3)。このステントにより、多くの患者がカテーテル治療だけで、長く狭心症が再発しないまま過ごせるようになりました。
薬剤溶出型冠動脈ステントの登場は、センセーショナルでありましたが、カテーテル治療の手技的問題が改善したわけではなく、バイパス手術の方が安全と判断される症例がまだまだ多くあります。冠動脈バイパス手術のリスクは予定手術では1%以下で、カテーテル治療と同じぐらいのリスクになります。また、冠動脈バイパス術のほうが依然として長期成績は良いため、10年後のことを考えて治療選択が必要となる場合(50歳から70歳台の患者など)では、カテーテル治療と外科手術とどちらが良いかをよく考えて治療選択をする必要があります。
一般的な外科的治療
図1-4:冠動脈バイパス術の模式図
人工心肺装置
図1-5:人工心肺装置
図1-6:人口心肺装置の利点・欠点
人工心肺非使用心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)
バイパスに使用する血管
図1-7:冠動脈バイパス術後造影
当院での狭心症、心筋梗塞に対する治療方針
バイパスに使用する血管は、前述した通りのさまざまな背景、バイパス血管の寿命があるため、当病院では、60歳台、70歳台の患者で落ち着いた状態で手術を行える場合には、動脈グラフト(左右内胸動脈、右胃大網動脈、橈骨動脈)を多用して高い長期開存を目指し、手術後10年、20年狭心症で悩むことなく生活できることを目指しています。80歳を超える症例では、内胸動脈と大伏在静脈を使用し、人工心肺装置を使用せずに冠動脈バイパス術を行い、手術侵襲をできる限り小さくして早い回復を目指します。緊急バイパス手術の場合は、大伏在静脈を使用してできるだけ早く心筋への血流を再開し、心臓機能の早期回復、心筋梗塞の範囲をできるだけ狭くすることを目指します。
OPCAB手術の欠点として、細い冠動脈へのバイパスの開存率が低下する、あるいは、細い冠動脈へのバイパスをはじめから断念するためバイパス本数が少なくなる、ということが言われており、信頼の高い医学雑誌でも最近指摘されました。バイパス数が少なくなったとしても、高齢の患者では、予後、再入院率、心事故発生率などに影響はないと思われますが、50歳から60歳台では、長期的な視野で見ると再発率、心事故発生率に差が出てくると思われます。この年代の方は、人工心肺装置のリスクは低いと思われますので、心臓の状態をできるだけ良くすることを優先した手術方法を選択します。OPCAB手術では対応が難しい血管がある場合では、通常の人工心肺装置を使用し、バイパス本数を減らしたりするようなことがないようにしております。
心筋梗塞後の合併症として発生する心室瘤や虚血性心筋症と呼ばれる重症心不全へと移行した状態には、冠動脈バイパス術だけでは症状の改善、生命予後の改善は得られないため、当院では積極的に左室形成術、僧帽弁形成術を合わせて行っており、良好な治療成績が得られております。