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ドクターが教える!病気あれこれ

心不全

心不全とは

 心不全とは、心臓が心臓としての機能を果たせない状態であります。心臓の機能とは、血液を全身へ送るポンプ機能であります。血液が十分に全身に送られない(循環不全)と、脳、肺、肝臓、消化器、腎臓などの臓器も機能できなくなります。狭い意味での心臓の機能は、腎臓と協調しながら全身の水のバランスを維持する機能と言えます。そのため、心臓が原因で、全身の水のバランスが保てなくなり、体に水が貯留した状態が心不全と言えます。腎臓が原因で水のバランスが保てないときは腎不全、いっ水といい区別します。

 体に水分が貯留すると、肺に水がたまったり(肺水腫)、胸に水がたまり(胸水貯留)息苦しくなったり、足のむくみ、肝臓に障害を来たし(肝腫大、肝障害)腹水が貯留したりという状態となります。有効な循環が低下しているため、運動時の息切れ、動悸などを自覚します。これが典型的心不全です。

 心不全を起こしてくる原因は、二通りあります。ひとつは、心臓の筋肉そのものが障害される病気です。例えば、血流途絶により心筋が壊死して心臓の一部が動かなくなる心筋梗塞、原因不明で心臓の筋肉が弱ってくる心筋症、心筋にウイルスなどが感染して炎症を起こす心筋炎などが挙げられます。もうひとつの原因が、心臓弁膜の具合が悪くなる心臓弁膜症です。

心不全の一般的治療

水バランスの是正:心不全の場合、水バランスの破綻から来る症状をとるために、体から水を抜くことが必要で、利尿剤を使って尿として水を抜きます。場合によっては血液透析で水を抜くことも必要となります。

循環維持:心臓の機能が極端に低下しているときは、血圧が低下してしまう場合もあります。この場合、心臓のポンプ機能をある程度高める必要があるため、強心剤という、心臓を刺激する薬が必要な場合があります。薬では不十分なときは、IABP(大動脈内バルーンパンピング)という心臓を補助する機械が必要なこともあります。IABPでも不十分な場合は、経皮的補助循環装置、あるいは補助人工心臓という、強制的に血液を循環させる機械を使うこともあります。このような循環を一時的に補助しながら、水バランスを是正して、改善するのを待ちます。

心機能改善薬:全身状態が落ち着いている場合は、心臓機能を改善させるための飲み薬を使います。心不全の場合、ホルモン分泌の変化が起きます。この変化は、一時的には全身状態の改善に有効となりますが、慢性的に持続すると心臓に障害を与え、徐々に心臓機能を低下させるように働きます。このホルモンのバランスを調整することで、心臓の機能に改善が見られます。βブロッカーやARB、ACEインヒビターと呼ばれる薬が使われます。

当院における心不全に対する外科治療

当院では、低下した心臓機能をできる限り改善することで、症状緩和、生活レベルの向上、再入院率、心事故発生率の低下などという良い結果を提供できると考え、積極的に取り組んでおります。心不全に対する外科治療は、基本的には原因疾患に対する治療となりますが、心拡大や僧帽弁逆流を来たしている場合、左心室を縮小する手術や僧帽弁形成術を行うことで心機能の改善が期待できます。

狭心症、心筋梗塞:冠動脈バイパス術が有効です(図5-1)。

狭心症の説明ページへ

心臓弁膜症:弁置換術や弁形成術が有効です(図5-2)。

弁膜症の説明ページへ

虚血性心筋症:重症の狭心症や心筋梗塞が原因で、心臓の機能が低下している場合、虚血性心筋症と呼びます。この状態は、心筋の血流障害がもとで、心臓機能が低下し、心臓が拡大し、僧帽弁に逆流が生じ、さらに心臓機能を悪化させるという悪循環に陥っております。心筋梗塞を起こしていない場合は、冠動脈バイパス術だけで改善することがありますが、僧帽弁の逆流がある場合、逆流を止めるべく弁形成術をしたほうが長期的に見て心不全の改善に効果があります。広範囲の心筋梗塞があり心臓が拡大している場合は、左室形成術(左室縫縮術)を行い左心室の形を整え縮小させると心臓機能が改善します(図5-3)。心室瘤となっている場合も左室形成術の対象となります。これらの余病を合併した患者に対し、単に冠動脈の血流改善(カテーテル治療や冠動脈バイパス術)を行うだけでは、心不全傾向の改善は期待できないため、当院では、積極的に合併手術を行っております。場合により、冠動脈バイパス術+僧帽弁形成術+三尖弁形成術+左室形成術+メイズ手術を一度の手術で行うこともあります(図5-4)。

拡張型心筋症:原因不明の心筋障害により心臓が拡張し心臓機能が低下していく病気です。最近は、βブロッカー、ARBなどの内服治療が普及し、予後が非常に改善しました。しかし、そのなかでも心臓機能の改善が見られず、悪化していく場合があります。心臓が拡張して、僧帽弁に逆流が生じ始めると悪化の一途をたどります。この場合、原則的には心臓移植の適応となりますが、移植適応条件も厳しいため、移植治療が受けられない場合も多々あります。このため、僧帽弁形成術で弁の逆流を止める、左室縫縮術(バチスタ手術、左室形成術)で心臓を小さくすることで、状態の改善、心機能の改善が得られます(図5-5)。拡張型心筋症に対する僧帽弁形成術、バチスタ手術、左心室形成術は、あまり成績がよくないと言われておりますが、心臓移植が受けられない患者にとっては、状態を改善させることが可能であるため、その役割は十分あるかと考えております。移植適応患者では、状態が悪化した場合、移植までの期間を補助人工心臓の力を借りて移植待機します。時に補助人工心臓を使うことで心機能が改善することがあります。

CRT(心室再同期療法、Cardiac Resynchronization Therapy):正常の心臓では、左心室の動きは、全体が同時に左心室の中心に向かって収縮し血液を大動脈へ駆出します。心不全の心臓や電気的流れが部分的に途絶(脚ブロック)した心臓では、左心室全体がタイミングよく効率よく収縮しないことが多々あります。左心室の部分部分で収縮のタイミングにずれがあると、たとえば、前側の部分が収縮しても後ろ側の部分が収縮しないままであり、後ろ側が収縮を始めたときにはすでに前側は収縮が終わっているような場合、効率よく血液を駆出できないという現象が見られます。心臓機能が正常な場合は大きな影響はありませんが、心臓機能が低下してくると収縮の効率の悪さが心不全の悪化を招くことになります。CRT(心室再同期療法)というのは、左心室にペースメーカーのリードを2箇所につけ、タイミングよく刺激することで前記のような左心室の収縮タイミングのずれを補正するというものです。これにより、血液駆出効率が改善し、僧帽弁の逆流を減らし、心不全が改善するのが知られており、ここ数年で普及し始めました。通常のペースメーカー挿入と同じような方法で植え込むことが可能です。当科では、適応があれば、心臓手術時に直接心表面にペースメーカーリードを装着することもしております。

当科では、低下した心機能を改善すべく積極的に外科的治療を行いますが、術後に内服療法を合わせることでその効果は増加し、安定した心臓の機能の回復、生活の質の向上が期待できます。