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ドクターが教える!病気あれこれ

乳腺外科

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乳房の構造と乳腺の役割

乳房は胸壁(肋骨、肋間筋、胸筋などからなる)の上に位置し、皮膚、皮下組織(脂肪など)、乳腺組織から成り立ちます。乳腺は母乳をつくり、新生児、乳児への栄養や免疫機能を与える重要な組織です。

乳腺組織は胎児期の5週目ごろより作られ始めますが、女性では10〜12歳になると女性ホルモンの分泌が高まり、乳腺組織は成人型に成熟し始めます。閉経とともに女性ホルモンの分泌が減り、乳腺組織は脂肪組織へと変化していきます。

成熟乳腺は腺細胞とそれにつながる乳管細胞からなり、乳管細胞は木の枝のようにつながって太くなり、乳頭に開ロします。腺細胞は嚢状になって乳腺の腺房を形成し、それが10〜100個ほど集まって小葉をつくり、さらに20〜40集まってひとつの乳管になります。腺細胞が作る乳汁は乳管を通して乳頭部より分泌されます。

乳頭に開口するのは、15〜20の乳管です。これらの乳腺組織は胸筋膜や腹壁筋膜と連続する線維性結合組織で覆われており、その周囲(皮膚と乳腺の間や胸壁と乳腺の間)を脂肪組織が覆っています。

乳房の構造

乳房の構造

乳腺組織のミクロの世界

乳腺の病気をわかりやすく考えるために、ミクロの世界に飛び込みましょう。前項で説明したように、乳腺を構成するメインは乳腺腺房(またはその集合体である乳腺小葉)とそれにつながる乳管です。乳腺腺房と乳管はそれぞれ1層の乳腺腺房細胞(小葉細胞)または乳管細胞でおおわれています。これらの細胞は総称して上皮細胞と呼ばれています。この外側には1層の筋上皮細胞という細胞があり、この細胞はオキシトシンというホルモンに反応して収縮し、乳汁分泌にかかわっています。これら上皮細胞と筋上皮細胞はさらに基底膜という膜で裏打ちされており、腺組織を構成しています。各小葉・乳管組織の間には線維細胞やリンパ球、線維結合組織が存在します。

良性と悪性の違い

良性腫瘍とか、悪性腫瘍などという言葉を耳にする機会があると思いますが、この“良性”と“悪性”の違いは何でしょう? 基本的に、良性腫瘍はその場で増殖し拡大しますが、周囲の血管やリンパ管に拡がることなく、できたところに限局しています。悪性腫瘍は癌や肉腫などに代表されるものですが、血管やリンパ管に乗って全身に拡がります。悪性腫瘍は無秩序に増殖し、全身を蝕むので恐れられているのです。

乳腺症とは

乳腺症はエストロゲン・プロゲステロンという女性ホルモンのバランスの乱れから起こると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。前述した乳腺小葉・乳管の細胞の数が増え、1層でなく何層にもなったり(過形成や乳頭腫症)、細胞の形が変わったり(アポクリン化生)、乳管の径が不規則となり拡張した乳管の中に液体が貯まったり(のう胞)、乳腺腺房の密度が増したり(硬化性腺症)、周囲の線維成分が増したり(線維腺腫様変化)、その他さまざまな変化が乳腺全般に現れます。このため、乳腺に痛みを感じたり、乳頭からの分泌物がみられたり、ごりごりした腫瘤をふれたりするのです。上記の変化のほかに、乳腺小葉・乳管の細胞の大きさや細胞核の形・大きさなど、細胞の顔つきから“異型性あり”と判断される場合があり、こういった病変が見られる場合は、将来、癌化する可能性が高くなるといわれています。

Q1.乳腺症は遺伝しますか?
一概には言えませんが、お母様が乳腺症といわれ、娘さんがやはり“ごりごりした乳腺”を持っているというケースはよくみられます。
Q2.乳腺症の予防は?
原因が明らかでないので、決定的な予防策はありませんが、痛みがある場合、過剰な脂肪分やカフェインを制限するといいとも言われでいます。
Q3.乳腺症の治療は?
乳腺症は正常乳腺でも見られる変化の甚だしいものですので、一概に病気とは言えません。ですから、治療も必要ありません。

線維腺腫とは

線維腺腫は、乳腺周囲の線維組織成分と腺細胞成分の両方が増殖する良性腫瘍です。10代~30代の比較的若い年齢に見られ、くりっとしたしこりとして触れることが代表的です。線維腺腫は良性なので大きさが変化しなければ放置しておいてかまいませんが、大きさが増大する場合はほかの疾患の可能性もありますので手術して摘出することもあります。

Q1.線維腺腫は硬いくりっとしたしこりで触れるといいます。
しこりがくりっとしていれば、放って置いてもかまいませんか?
どのような年齢でも、しこりを触れた場合は悪性の可能性は否定できませんので検査施設のある病院での診察をお勧めします。

乳癌に関する基礎知識

1.乳癌の発生と進展

 乳癌は、乳腺組織の上皮細胞(乳腺腺房(小葉)細胞あるいは乳管細胞)が悪性化するものです。悪性化すると、周囲の正常細胞を殺しながら増殖していき、乳管を伝わって周囲に拡がったり、基底膜を突き破り周囲の脂肪組織や筋肉に食い込んだり、皮膚を突き破って潰瘍を形成したりするだけでなく、リンパ管や血管に入り込み、周囲のリンパ節や他の臓器(骨、肺、肝臓、脳など)にも拡がっていきます。

2.乳癌の危険因子

 乳癌発生に関与する因子としては女性ホルモン(エストロゲン)が第一に挙げられます。ですから、初経年齢が早い人、閉経年齢が遅い人、初産年齢が高い人、長期の女性ホルモン補充療法を受けている人などはリスクが高くなります。経ロ避妊薬(ピル)を長期間継続して服用している人は、服用期間が長いほど乳癌のリスクが高くなりますが、プロゲステロンのみの避妊薬(ミニピル)と乳癌の関連を示す証拠はありません。また、エストロゲンは脂肪組織でも作られるため、肥満もリスクの一つと考えられています。
その他、脂肪(特に動物性脂肪)摂取量が多いこともリスクにつながるといわれています。乳癌と遺伝については、現在乳癌家系として知られているのは乳癌・卵巣癌が多発するBRCA1、BRCA2遺伝子変異で、遺伝性乳癌の30~40%を占めるといわれています。特にユダヤ人家系に多くみられ、BRCA1の変異では高率に乳癌と卵巣癌を発症します。日本では約100家系あるといわれています。
BRCA1、BRCA2遺伝子変異以外にも家族性乳癌は存在すると考えられていますが、いまだに原因遺伝子は明らかになっていません。一般に、母または姉妹が乳癌にかかった、特に若年で発症した場合はリスクが高く、他に同一家系内に乳癌にかかった人が複数いる場合もリスクが高くなります。

3.わが国の乳癌

 アメリカでは一生涯で8人に1人が乳癌にかかるといわれて、2004年には21万7000人が乳癌に罹患し、4万人以上が乳癌で亡くなると予想されています。わが国では欧米に比べ、乳癌の発生頻度は低いものの、その罹患率は増加し、乳癌は現在日本女性の癌の第1位となっています。我が国で乳がんになる人は毎年約4万人で、現在でも増え続けています。欧米では1990年後半から検診の普及もあり乳癌による死亡数は減少していますが、我が国では約1万人が毎年乳がんにより亡くなっており、その数も年々増加しています。

乳癌の症状

  • しこり
  • 皮膚の変化(引きつれ・発赤・浮腫・潰瘍)
  • 乳頭よりの異常分泌(血液の混じったものや褐色のもの・黄色や透明などさまざま)
  • 乳頭の変形・引きつれ・陥没
  • わきの下のリンパ腺がはれる

乳癌の診断手順

  • 視触診:
    皮膚・乳頭の変化を肉眼で見たり、しこりの性状や大きさ、腋窩リンパ節腫大の有無を手で触って調べます。
  • 画像診断:
    マンモグラフィ(乳腺レントゲン撮影)・超音波・CT・MRIなどがあります。
  • 生検による病理組織診断:
    実際にしこりに針を刺して細胞を吸い取る穿刺吸引細胞診・針を刺して組織を取る針生検・手術をして組織をとる手術的生検により、実際の細胞や組織を採取し、顕微鏡で形態を調べます(病理学的検査)。

乳癌の進行度

  • 非浸潤性乳癌:
    非常に早期の乳癌です。乳癌は発生した乳管または小葉の上皮内にとどまります。
  • 浸潤性乳癌:
    癌細胞は基底膜を突き破って周囲に拡がるため、直上の皮膚の変化を起こしたり、深部の筋肉に食い込んだり、血管・リンパ管に癌細胞が入り込み他の臓器(骨・肺・肝臓・脳など)に転移する可能性があります。
  • 転移性乳癌:
    乳癌細胞が乳房のみならず他の臓器に拡がった状態で、無症状のときもありますが、進行すると骨転移による骨の痛みや骨折・肺転移による咳や呼吸困難・胸膜転移による胸水・脳神経転移による頭痛や神経症状がみられたりします。

一般に乳癌は、局所での拡がり(しこりの大きさや周囲への拡がり)、リンパ節への転移、他臓器(胸壁、骨、肺、肝臓、脳、その他)への転移の程度によって進行度が決まります。

乳癌の治療

 乳癌に対する治療は、癌の種類、乳癌の発生部位、進行度などにより決まります。さらに、患者の年齢、閉経の有無、全身状態なども考慮されます。
 乳癌に対しては、手術、放射線治療、抗癌剤治療、ホルモン治療、生物学的治療の5つの標準的な治療法があります。手術と放射線療法は局所に対する治療で、抗癌剤とホルモン・生物学的治療は全身に対する治療です。個々の患者に応じて、5つの治療法の中から1つ、あるいは複数組み合わせた治療法が選択されます。
 癌が局所にとどまると考えられた場合は、手術療法が主体となります。手術後残った乳腺や周囲組織に放射線療法を加えることもあります。乳癌が大きい場合・わきの下のリンパ節に癌細胞が転移していた場合や、検査により将来癌が全身にひろがる可能性が高い場合など、全身臓器への再発の危険性が高い場合には、手術前または後に抗癌剤治療・ホルモン治療・生物学的治療が付加されます。この目的は、身体に残っている可能性のある発見不可能な癌細胞を撲滅させ、再発を防ぐことにあります。
 すでに全身に癌が拡がっていると考えられる場合は抗癌剤治療・ホルモン治療・生物学的治療が主体となりますが、症状を取るための放射線照射や手術も併用されます。

手術件数

2010年の当院での乳腺疾患手術件数は以下のようになっています。

乳腺腫瘍摘出術 乳房部分切除
(リンパ節郭清含む)
乳房全摘
(リンパ節郭清含む)
7 16 25 48