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ドクターが教える!病気あれこれ

胃がん


ページ内目次


概要

胃がんは胃の粘膜から発生する悪性腫瘍で、病気の進行度(病期、ステージ)によって治療方針が異なってきます。胃がんの進行度は、がんが胃の壁のどの深さまで進んでいるか(T、深達度)、リンパ節転移がどの程度あるか(N、リンパ節転移個数)、遠くの臓器への転移があるか(M、遠隔転移)で決まります。

症状

早い段階では症状が出ることは少なく、かなり進行した場合の代表的な症状は、食欲不振、腹痛、嘔吐、吐血などです。しかし、これらの症状は胃がん特有の症状ではなく良性の胃潰瘍でも起こります。したがって、胃薬で様子をみるだけではなく医療機関を受診して検査を受けることが重要です。

検査方法

  • 胃内視鏡検査
  • 胃レントゲン検査
  • 腹部CT検査
  • 腹部超音波検査 など

治療方法

内視鏡的胃粘膜下層剥離術(ESD)

胃粘膜内がんに対して、消化器内科の先生を中心として、内視鏡的胃粘膜下層剥離術を行っています。外科的手術に比較して身体に優しい治療と考えています。

1. マーキング

マーキングのイメージイラスト

内視鏡を胃の中に入れ、病変の周辺に切り取る範囲の目印をつける。

2. 局注

局注のイメージイラスト

粘膜下層に薬剤を注入して浮かせた状態にする。

3. 切開

切開のイメージイラスト

粘膜下層に薬剤を注入して浮かせた状態にする。

4. 粘膜下層の剥離(はくり)

粘膜下層の剥離のイメージイラスト

専用ナイフで病変を少しずつ慎重にはぎとる。

5. 切除完了

切除完了のイメージイラスト

ナイフを使って最後まで剥離する、または最後にスネアで切り取る。

6. 止血

止血のイメージイラスト

切り取ったあとの胃の表面に止血処置を施し、切り取った病変部は病理検査に出すため回収する。

7. 病理検査

病理検査のイメージイラスト

切り取った病変は顕微鏡による組織検査をし、根治しているかどうかの判断をする。

腹腔鏡下胃切除術

当科では早期胃がん、一部の進行胃がんやGISTを始めとする胃粘膜下腫瘍に対して、腹腔鏡を用いた傷の小さな手術を行っています。胃がんに対する鏡視下手術は、1991年から25年以上の歴史があり、手術手技は定型化されてきています。

開腹胃切除術

胃がんの進行度にあわせた適正手術を基本とし、胃切除後障害の一つである残胃炎およびダンピング症状軽減する吻合法や神経温存、幽門保存などの機能温存手術を行っています。

胃がんの進行度

N0
リンパ節移転がない
N1
胃に転移したリンパ節に転移がある
N2
胃を養う血管に沿ったリンパ節に転移がある
N3
さらに遠くのリンパ節に転移がある
T1,M
胃の粘膜に限局している
ⅠA
分化型で2cm以下(潰瘍なし)なら内視鏡で粘膜切除、それ以外は縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網などを残す)
ⅠB
2cm以下なら、縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網などを残す)それ以外は普通の胃切除術

普通の胃切除術

拡大手術
緩和手術
(姑息手術:がんによる症状を改善する手術)
化学療法
放射線療法
緩和医療
T1,SM
胃の粘膜下層に達している
ⅠA
縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網などを残す)
ⅠB
2cm以下なら、縮小した胃切除術(リンパ節郭清一部省略、神経、胃の出口、大網などを残す)それ以外は普通の胃切除術

普通の胃切除術
T2
胃の表面にがんが出ていない、筋層あるいは漿膜下層まで
ⅠB
普通の胃切除術

普通の胃切除術
ⅢA
普通の胃切除術
T3
漿膜を超えて胃の表面に出ている

普通の胃切除術
ⅢA
普通の胃切除術
ⅢB
普通の胃切除術
T4
胃の表面に出た上に、他の臓器にもがんが続いている
ⅢA
拡大手術(胃以外の臓器も切除)
ⅢB
拡大手術(胃以外の臓器も切除)
肝、肺、腹膜など遠くに転移している

残胃炎およびダンピング症状を軽減する幽門再建術(IRB承認)

残胃炎およびダンピング症状を軽減する幽門再建術(IRB承認)の写真とイメージ画像

幽門保存胃切除術(PPG:pylorus preserving gastrectomy)

幽門保存胃切除術のイメージイラスト

出典:「胃がん治療ガイドラインの解説」より

胃の出口に相当する幽門部を一部残すことにより、ダンピング症候群や十二指腸液の胃内逆流を防ぐことを目的としています。その他、胃に付着している大網を残し、癒着を軽減させ腸閉塞を予防します。また、胃周囲の迷走神経を温存することにより、下痢や胆石症の発症頻度を低くします。

術前化学療法、放射線療法

腫瘍を小さくしてから手術を行うことが望ましい方に対しては、まず化学療法を行い、その効果を見てから手術を行っています。また、限られた条件下ではございますが、近隣の放射線治療施設と協力し、局所放射線療法を行っています。切除困難症例に対する放射線化学療法で、病巣が消失したと考えられる症例を経験しています。

放射線化学療法の有効例

放射線化学療法の有効例の写真

左:胃噴門部小弯側に2/3周性のType2病変
右:腫瘍は平坦化し、びらんを認めるのみ