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季刊「まちだ市民病院クォータリー」

【当院のがん治療⑤】原発性肺がん


呼吸器外科 医長/医師 松平 秀樹
呼吸器内科 医長/医師 數寄 泰介

肺がんとは?

がんには、大きく分けて原発性と転移性があります。例えば、大腸がんが肺に転移すると、転移性肺がんと言い、大腸がんは原発になります。今回紹介する原発性肺がんは、元のがんが肺にできることを言います。
肺がんは、症状からは診断が非常に困難な病気です。しかも、一般的には早い段階から転移しやすい特徴があります。2020年の厚生労働省動態統計での主な部位別がん死亡数(図1・図2)をみると、肺がんは女性で2番目、男性では最も多い死亡者数です。決して珍しい病気ではないのです。肺がんは50歳を過ぎたあたりから好発し、高齢者に多い傾向にあります。
(厚生労働省全国がん罹患データ(2018年)より)

※転移(てんい):がん細胞がリンパ節や他の身体の臓器へ飛び火すること

グラフ図。1位が大腸がん、続いて2位が肺がん、3位が肝臓がん。

図1 主な部位別がん死亡者数(女性)

グラフ図。1位が肺がん、続いて2位3位同率で胃がんと大腸がん。

図2 主な部位別がん死亡者数(男性)

ステージ分類と治療方針の決定

肺がんの進み具合のことを「ステージ」と呼んでいます。このステージは1から4(IからIV)の数字で示されます。大まかにはステージI期とII期は手術が推奨されます。III期の一部では手術を行うことがありますが、手術のみではなく化学療法や放射線治療の併用も必要となってきます。よってIII期の大部分とIV期では化学療法が主体となります。

ガイドラインに基づいて治療方針を検討していますが、患者さまお一人お一人に最適な治療法をご提示できるように町田市民病院では呼吸器内科と呼吸器外科がカンファレンスを行っています。全ての検査を終えられた患者さまとご家族へは、このカンファレンスの結果に基づいて治療方針をご説明しています。

検査について

受診時には、問診や身体所見をふまえて、より詳細な肺がんの診断を得るために精密検査を行います。主な検査は以下のとおりです。そのほか、患者さま個々の全身状態を把握するために、呼吸機能検査、採血検査、尿検査、心電図検査なども行います。

肺がんを確定診断するための検査

気管支鏡検査、CTガイド下肺生検、喀痰検査、PET(ペット)検査、腫瘍マーカー採血 など

肺がんと診断した場合、他の臓器への転移を調べる検査

脳MRI検査、PET検査、骨シンチグラフィー検査、腹部CT検査 など

治療について

手術療法

  • 当院での肺がんに対する手術は、1cm前後のキズ4箇所で行う「胸腔鏡手術」もしくは約8cmのキズと1cmほどのキズを合わせた「ハイブリッド手術」(胸腔鏡と従来の開胸手術、双方のメリットをとりいれた方式)を基本としています。

  • 他の臓器への浸潤などを起こしている肺がんに対しては拡大手術も対応しています。

  • どのような術式で手術を行うかは肺がんの状態や患者さまの全身状態などによって判断しており、術前のご説明で詳しくお話ししています。私たちは「より安全」「より確実」「より低侵襲(負担の少ない)」な手術を心がけています。

放射線治療

  • 当院では放射線治療を行う設備がないため、放射線治療の適応がある場合は他の医療機関に紹介し、治療を依頼いたします。

  • 多くの場合、放射線治療後も引き続き当院での診療を行います。

化学療法

  • Ⅲ期のほとんどとⅣ期の肺がんの治療は化学療法が主体です。

  • 肺がんの化学療法はここ数十年で大幅に進歩しています。以前はがんの細胞を破壊する薬物、いわゆる抗がん剤の治療のみでしたが、2000年代初頭にゲフィチニブという薬剤が出現し、ゲフィチニブが効く患者さまはEGFRという体内の細胞構造を作るための遺伝子(設計図)に変異があるということがわかりました。これ以降、様々なタイプの遺伝子変異が見つかり、それに対する治療薬が出現しました。

  • さらにノーベル賞受賞となったニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬が2010年代後半に使用することができるようになりました。

  • 薬物治療が多岐にわたるようになりました。最良の治療効果を得るために、がんの診断時にどの組織型のがんか、免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いタイプか (PD-L1タンパク検査)、遺伝子変異があるか、を評価する必要があります。

  • 当院では、数種類の遺伝子変異を一度にチェックする検査キットでの検査を行っております。

医師たちの写真

メッセージ

町田市民病院には、呼吸器内科と呼吸器外科という領域の専門医が常勤で勤務しており、肺がんの診断や治療は呼吸器内科と呼吸器外科の合同チームで行っています。どちらの診療科でも、肺がんに関する診察が可能です。皆様のご病気に対する心配に私たちは真摯に対応いたします。
診療でわからないことがありましたら、当院の呼吸器内科・外科スタッフにご相談ください。